前回の記事「オープンインターネットを諦めない理由」には、大変多くの反響をお寄せいただきました。ありがとうございます。社会に必要な情報を届ける媒体を支えていきたいと考える仲間がこれほど多くいるとわかり、大きな励みになりました。
その記事で引用した日本アドバタイザーズ協会(JAA)の「デジタル健全化」座談会は、9月30日に後編が公開されました。SUBARU 宣伝課 課長の安室敦史さんは、自動車雑誌を担当していた頃のことをこう語っています。
『ラリープラス』という雑誌の表4に広告を入れ続けていたのですが、先輩から引き継いだときに、「次、お前の仕事はこれだ。ラリープラスだけは絶対に表4に入れ続けろ。誰に何を言われても続けろ」と言われました。 「でも、もうラリーはやめていますよね」と聞いたら、「もし、いつかラリーに戻ることになったとき、ラリーを伝えてくれているラリープラスがなくなっていたらどうするんだ。我々が広告を入れなかったら、この雑誌がなくなって、ラリーという文化がなくなる。日本でラリーを伝えてくれているのは、このメディアしかないんだ」と。 その言葉がすごく印象に残っています。 それと同じことだと思うんです。必要なメディアというのは絶対にある。僕らにとっては『ラリープラス』だったわけですが、日本人にとって必要なメディアもきっとある。 そうしたメディアと、Win-Winになっていく関係をつくる必要があるのではないでしょうか。
同じ座談会で、ディップの中村大亮さんも「心あるクライアントが協力して、正しいことをやっているメディアをきちんと儲けさせることも必要」と話しています。広告に携わる皆さまに、ぜひ後編の全文を読んでいただきたいと思います。
媒体の側からも声が上がっています。10月11日、ロケットニュース24の編集長 GO羽鳥さんが「こんなクソ広告ばかり出していたら、そりゃWebから人はいなくなるよ。」というコラムを公開しました。広告で収益を得ている媒体の編集長が、自分たちの言葉で、もっと読者のことを考えようと訴えたことで、我々の周りでも、同じ思いを口にする人が出てきています。我々はそのような読者を大切にするメディアを支援できるよう、この秋、広告取引の多い上位1000ドメインのうち国内の媒体の広告体験を徹底調査し、良質な読書体験を提供している媒体を、ブランド広告を配信するための「CEESAW優良媒体PMPリスト」にまとめました。
調べ方は、対象となった国内の866媒体について、ブラウザでページをスマホとPCで開き、広告の出方を測るというものです。要点は次の3つです。
- スマホでは、半数近くの媒体で全画面広告が実際に表示された。 採点できた777媒体のうち367媒体です。設定やリクエストまで含めると602媒体、8割近くにのぼります。
- 別の記事でも確かめ、広告体験の良い媒体を絞り込んだ。 全画面広告や、画面に居座り続ける固定広告がなく、広告の量も抑えられている媒体です。そのうちニュースサイトなど編集部が記事を作る7媒体を推奨としました。見つかった注意点が Google の定型の全画面広告(Google の自動広告の設定を含む)か、高さ120ピクセルまでの画面に貼り付くバナーだけの10媒体は準推奨とし、それ以外の種類の媒体は条件付き推奨(28媒体)と条件付き準推奨(22媒体)に分けました。
- このリストを、関心のある広告主と代理店に無償で提供します。「読者を大事にしている媒体に広告費を届けたい」という方は、申し込みフォームからご連絡ください。
編集長が書いた「間違い探し」
羽鳥さんのコラムが取り上げているのは、多くの人が日々出くわしている広告です。記事を開くと画面いっぱいの広告が出て、閉じるボタンがいくつも並び、正解は目立たない灰色の小さな「close」だった。羽鳥さんはこれを「ほとんど間違い探し」と書き、「広告を消す方法を探させることが、広告なのか。」と問いかけています。記事を読む前に「あと5秒」「あと15秒」と待たされる広告にも触れ、「読者の気持ちを全く考えていない」と書いています。
大事なのは、羽鳥さんが広告そのものを否定していない点です。広告は媒体を支える収入源であり、問題は出し方にある。そのうえで「自分で自分の首を絞めるのは、もうやめよう」と呼びかけています。
広告の取引に携わる我々にとっても、これは媒体だけの問題ではありません。読者が嫌がる出し方の広告枠ほど、視認範囲の表示回数やクリック数が稼げて単価が安く見えることがあります。買う側が「安くて量が出る」枠を選び続ける限り、媒体が出し方を変える理由は生まれにくい。良い出し方をしている媒体に広告費が集まる流れを、買う側と一緒につくれないかと考えました。
何を測ったか
対象は、広告取引の多い上位1000ドメインから、海外のサイト、SNS、広告配信・ログイン用などページを持たないドメインを除いた866媒体です。ニュースや雑誌のサイトだけでなく、ブログ・投稿サイトや、辞書・ツール・ゲーム・EC など記事を持たないサイトも含めています。記事のあるサイトはトップページから記事を1本開き、記事を持たないサイトはトップページからサイト内のページを1つ開いて、スマホ(Android の Chrome と同じ設定、画面幅390ピクセル)とPC(Chrome、画面幅1440ピクセル)それぞれで、ページの最下部まで(長いページは40画面分まで)読み進めながら次の点を測りました。
| 見たこと | 内容 |
|---|---|
| 全画面広告 | 記事の前後に画面いっぱいの広告(画面の半分以上を覆う広告を含む)が出るか。表示されなくても、ページの設定や通信に全画面広告の要求が含まれていれば記録 |
| 固定広告 | スクロールしても画面に貼り付いたまま残る広告が、画面のどれだけを覆うか。画面の下部や隅に浮かぶ小さなポップアップ、記事についてくる動画プレイヤー、高さの大きいアンカー広告、画面の下部や上部に貼り付く高さのあるバナーも記録 |
| 広告の量 | スマホはページの縦の長さ、PCはページの面積のうち、広告が占める割合(スマホは業界団体 Coalition for Better Ads がモバイルの基準とする30%を参考にした。同団体はページの本文部分を基準に測るため、測り方は同じではない) |
| 画面の被覆 | 読んでいる途中のある瞬間に、画面のどれだけが広告で埋まるか |
| 最初の画面 | 記事を開いた直後の画面で、本文より先に広告が目に入らないか |
これに、The Trade Desk が業界向けに無料で提供している媒体の広告の出し方のデータ(OpenSincera)を組み合わせて100点満点で点をつけ、S(85点以上)、A(75点以上)、B(60点以上)、C(45点以上)、D(45点未満)の5段階に分けました。全画面広告は、出るかどうかに加えて種類も見ています。閉じるボタンの位置や形が決まっている Google の定型の全画面広告だけなら評価の上限をB、配信元を特定できないものはC、アドネットワークが提供する全画面広告は、我々が記録した範囲で閉じるボタンが枠の外にあるものや小さいものが目立ったため、評価の上限をDとしました。
全画面広告のほかに、画面の下部や隅に浮かぶポップアップ広告、記事を読む間ついてくる動画プレイヤー、高さの大きいアンカー広告(スマホで150ピクセル超、PCで画面の20%超)、スマホで画面の下部や上部に貼り付く高さ100ピクセルを超えるバナー(Google の標準のアンカー広告を除く。320×100 までの一般的なオーバーレイ広告は、閉じるボタンや余白を含めて高さ105ピクセルまでは対象外)は評価の上限をC、リワード広告(動画などを見ると特典がもらえる広告)とGoogleの自動広告の設定は上限をBとしました。前の4つは読む間ずっと画面に居座り、閉じるボタンを探させるためです。画面に出なくても、これらの広告を配信する事業者の通信が見えた場合は、同じく上限をCとしました。
そのうえで、60点以上(または点を下げた理由が広告の量だけ)の媒体は別の記事2本でも測り直しました(広告が十分に出なかった記事があれば、さらに別の記事を測りました)。記事を持たないサイトは、サイト内の別のページか、同じページを時間をおいて測り直しました。推奨とするのは、次の条件をすべて満たした媒体です。
- 広告が十分に出た記事が2本以上あり、その点の中央値が75点以上で、どの記事も60点を下回らない
- どの記事でも、全画面広告(Google の定型を含む)、画面の下部や隅に浮かぶポップアップ、ついてくる動画プレイヤー、高さの大きいアンカー広告、画面に貼り付く高さ100ピクセルを超えるバナー(320×100 までの一般的なオーバーレイ広告を除く)が出ず、その設定や要求も見当たらない
- 同じサイトのもう一方の端末、トップページ、同じサイトの別のドメイン(PC版とスマホ版など)でも、上の広告が見つからない
- スマホでは、固定広告が画面の3割を超えて覆うことがなく、広告の量の中央値が3割を超えない
- 広告の取引経路(OpenSincera のデータがある媒体)に、確認が必要な点が見つからない
- スマホとPCのどちらでも条件を満たす(片方の端末で広告が十分に出ず、測りきれなかった場合を除く)
1本の記事だけだと、たまたま全画面広告が出なかった、たまたま広告の多い記事だった、ということが起きるためです。
Google の定型の全画面広告は、閉じるボタンの位置や形が決まっており、表示の間隔を媒体側で設定する仕組みもあります。また、スマホで画面の下部に貼り付くバナーのうち高さ120ピクセルまで(閉じるボタンや余白を含めて125ピクセルまで)のものは、画面に占める割合が小さく、記事を読む妨げは比較的小さいと考えました。そこで、見つかった注意点がこれらだけ(Google の自動広告の設定を含む)の媒体は、その分の減点と上限を外したうえで同じ条件を当てはめ、満たしたものを「準推奨」としました。
推奨と準推奨の条件を満たした媒体は、さらに媒体の種類で分けました。推奨とするのは、ニュース(新聞・通信社・放送局・ポータル)、ビジネス・専門メディア、雑誌・Webメディアのように、出版社や編集部が記事を作り、社会に必要な情報を届けている媒体です。
それ以外の媒体は、広告体験が良くても「条件付き推奨」としてカテゴリごとに分けました。ゲーム関連メディア(広告の多くはゲーム会社からで、ブランド広告とは目的が合わないことが多い)、個人ブログ・投稿サイト・まとめ、情報まとめ・ポータル型のサイト、口コミ・Q&A・検索サイト、漫画・小説の配信、辞書・ツールなどの記事を持たないサイト、価格比較など送客型のサイト、予約・チケット・売買の場、EC、ゲームそのものを提供するサイト、動画・音楽の配信サービス、ログインが必要なサービス(アプリ内の広告枠)、放送局の番組・案内ページ、団体の公式サイト、公営競技・遊技の情報サイトなどです。準推奨の条件を満たした、これらの種類の媒体は「条件付き準推奨」です。また、運営者として法人名を確認できない個人運営のサイトは、編集体制や情報の確かさを確かめられないため、広告体験が良くても条件付き準推奨とし、「個人運営サイト」のカテゴリに分けました。どちらも、広告主が出したいカテゴリがあるときにだけ加えてもらう想定です。
商品比較・ランキングのサイトとポイントサイトは(価格比較サイトは条件付き推奨または条件付き準推奨に含めています)、アフィリエイトや送客で成り立っており、記事そのものが広告に近い役割を持つため、リストから外しました。不動産の物件探しのサイトも、送客が中心のため外しています。
結果の一部
| スマホ | PC | |
|---|---|---|
| 採点できた媒体 | 777 | 763 |
| 全画面広告が実際に表示された(測ったいずれかのページで) | 367(47%) | 350(46%) |
| 全画面広告の設定・要求まで含めると | 602(77%) | 563(74%) |
| 推奨(ニュースなど編集部が記事を作る媒体) | 7 | 7 |
| 準推奨(注意点が Google の定型の全画面広告か、高さ120ピクセルまでのバナーだけ) | 10 | 10 |
| 条件付き推奨(それ以外の種類の媒体) | 28 | 25 |
| 条件付き準推奨(それ以外の種類で、注意点が準推奨と同じもの、または個人運営のサイト) | 20 | 21 |
推奨は7媒体、準推奨は10媒体で、いずれもスマホとPCの両方で条件を満たしています。条件付き推奨は28媒体、条件付き準推奨は22媒体です。PC版とスマホ版など、同じサイトでドメインが分かれる場合は1媒体と数えています(リストにはドメインごとに載せています)。
866媒体のうち、測ったページに広告のタグが見当たらなかったサイト(スマホ46、PC52)、広告のタグはあるのに測っても広告が表示されなかったか、ごくわずかしか表示されなかったサイト(スマホ26、PC34)、ページを開けなかったか計測できなかったサイト(スマホ17、PC17)は採点していません。
ロケットニュース24は、スマホとPCでそれぞれ複数の記事を測りました。どの記事でも全画面広告は表示されず、ページの設定にも見当たりませんでした。見直したあとの計測では、点の中央値はスマホで85.8点、PCで86.2点となり、両方の端末で推奨に入りました。
実は、最初に作ったリストではロケットニュース24は漏れていました。たまたま開いた記事が4コマ漫画の回で、本文が短いぶん広告の割合が高く出たためです。PCでは、2本目もやはり4コマの回だったことに加え、広告が画面の4割ほどを覆う瞬間があり、点が下がっていました。ほかにも、記事によっては広告の面積や固定広告の大きさで点が下がっていました。読者を待たせたり、読む手を止めさせたりする広告と、読み終えたあとに並ぶ広告とを同じ重さで数えるのは、読者の感じ方と合いません。そこで、本文の範囲を見分けられるページでは本文を読んでいる間と読み終えたあとを分けて評価し、4コマのような特殊な回より普通の記事を優先して選び、広告の量は複数の記事の中央値で判断するように計測を見直しました。上の数字は、見直したあとの計測によるものです。
CEESAW優良媒体PMPリストを無償提供します
推奨・準推奨・条件付き推奨・条件付き準推奨の媒体のリスト(ドメイン、カテゴリ、スマホとPCそれぞれの判定と点)を、関心のある広告主と代理店に無償で提供します。ぜひフィードバックをお寄せください。改善が見られた媒体にも広告が配信されるよう、リストは随時アップデートしていきます。

CEESAW優良媒体PMPリストの一部(ドメインはぼかしています)
- 対象: 広告主、広告代理店
- 申し込み: 専用のフォームからお申し込みください(虚偽申請を防ぐため、企業ドメインのメールアドレスよりご登録ください)
媒体社からの、自社の計測結果を開示してほしいというご依頼には応じていません。ただし、広告の出し方を改善したので測り直してほしいというご報告は、お問い合わせフォームで受け付けます。
表示される広告の数や種類は、見る人の閲覧履歴やタイミングによって変わります。対象の866媒体は広告取引の多さで選んだもので、日本の媒体全体を代表するものではありません。点数は我々の基準による評価で、媒体の価値や記事の質を評価したものではありません。出典は本文中にリンクしています。